6.スンミ

 

スンミはいたたまれなくなった。

しかし、わずかな望みがあるのも事実だった。

もしかすると、敵を欺くための演技かもしれない。

あの律子が仲間を売るはずがなかった。

しかし...

律子の怯えようは、とても演技とは思えなかった。

やはり、ほんとうに....

と思った瞬間、

律子は目にも止まらぬスピードで、リーダー格の男の関節を決めていた。

「スンミ!!」

「り、律子!!」

スンミは飛び上がりたいほどの感激を胸に、手近な男をぶっ飛ばすと、シャツとズボンをひん剥いて、律子に渡した。

「律子!コレを着て!」

「ありがとう。」

「け、けど、どうして、今まで...」

「アナタの無事が確認できなかったから」

「り、律子!!」

スンミは、律子を信じ切れなかった自分を恥じた。

「律子!!アタシが絶対守る!!」

スンミは自分でも驚くほど、力がわいてきた。

とにかく叩きまくった。狭い部屋に100人近くいるので、手を出せは、敵に当たった。

律子も、奪いとった男物のシャツとズボンを身につけると、次々と敵を倒していった。

「スンミさん!窓を割って外にでましょう!」

「おう!!」

スンミは手近のB級男子を捕まえると、窓ガラスに向けて背負い投げた。

「ガシャーン!!」

スゴイ音を立てて、厚さ8ミリの防弾ガラスが割れる。

律子とスンミは素早く表に飛び出した。

午後8時を過ぎているせいか、表には、ほとんど誰もいなかった。

「ラッキー!律子!一気に校外に出ようぜ!」

「まって。そう簡単にはいかないみたいよ。」

校外に続く細い路地にポフィーが立っていた

剣は....

持っていない!

スンミが律子をかばうように立つ。

そうしているウチに、B級男子が追いついてきた。

律子がスンミに耳打ちする。

「男子どもは私がやります。スンミはポフィーを倒して。」

「わかった。」

ポフィーがため息を付いた。

「...なにやってんの?」

ヌギスタ男子どもに掛けた言葉だった。

リーダー格の男が弾かれるように

「す、すみません!!ゆ、油断しました!!」

「うん。」

「すみません!!」

「別にいいよ。」

ポフィーは、トレードマークの長い三つ編みをほどいていた。

長くてウエーブのかかった髪を夕方の風になびかせている。

独特のたたずまいがあった。剣豪のような...

「深台律子。思ったより骨があるんだね。」

「.....」

「たいしたものだ。」

「ポフィーさん。通してください。」

「ずいぶん汚れてるね。学園の温泉に入っていくといいよ。」

ポフィーはポケットからカードのような物を取り出して、律子に渡した。

「入浴カード貸して上げるよ。今、アタシも入ってきたんだ。」

「......」

律子にはポフィーの考えが読めなかった。

戦う気があるのか、無いのか...

「ポフィーさん。帰らせていただけませんか?」

「うん。まってて。」

ポフィーはヌギスタ男子のリーダに

「どうする?もういいかい?」

「そ、それが...まだオシオキが終わって無いんです。」

「そう...」

ポフィーは悲しいような、せつないような、微妙な表情で答えた。

「わるいな。あんたが安達ヶ原学園の生徒を大切に思うように、アタシも、こいつらをカワイク思ってるんだ。」

「帰さないと?」

「かわいそうだとは思うけどな。」

言い終わると同時にスンミがポフィーに掴みかかる。

寝技に持ち込む気だ。

しかし、

ポフィーは読んでいたのか、バックステップでかわしてしまう。

ポフィーの目に凶暴な光が宿った。

「おもしれー。みんな手をだすな。」

スンミはしたりと思った。

体中に力がみなぎっていた。

タイマンならまるで負ける気がしない。

「律子。さがっていてくれ。」

スンミは軽くステップを刻みながら、間合いを詰める。

ポフィーは相変わらず、ノーガードでたっている。

しかし、何とも言えないオーラのような...

いかにもヤバイ雰囲気がポフィーには立ちこめていた。

しかし、ポフィーは丸腰。スンミは臆さずタックルに入る。

一瞬の出来事だった。

タックルに来たスンミの左足を取り、顔面に蹴り。

倒れる所をカウンターのロウキックで切っておとした。

まるで問題にならなかった。

あまりの力の差に、呆然とする律子。

再び、2人は捕らわれの身となったのだ。

「オマエら。もう逃がすなよ」

「はい!!」

「アタシは道場にいぅてるから、何かあったら連絡しな。」

「は!お疲れさまでした!!」

B級のリーダーに続き100人が声を揃えて復唱する

「お疲れさまでした!!」

 

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